執筆者:カブヨム編集部
株式投資において、配当は重要な要素の一つです。
配当について調べていると、「高配当」や「累進配当」、「連続増配」など、様々な用語を見聞きすることがあるでしょう。
この記事では、配当を得るために知っておくべき基礎知識や、配当を目的とした投資を実践するときに考えたいポイントを具体的に見ていきましょう。
そもそも「配当」とは?
配当とは、企業が得た利益の一部を現金や株式の形で株主に還元すること(またはその制度)を意味します。特に現金の形で還元する場合は「配当金」とも呼ばれます。株主が株を保有することによって得られる利益(インカムゲイン)のひとつであり、株主にとっては投資の魅力を高める要素となるでしょう。
配当は、企業の財務状況や利益成長の有無に大きく影響されます。例えば、企業が安定した利益を上げている場合、配当が定期的に支払われる可能性が高いです。一方で、企業の成長段階や投資戦略によっては、配当を支払わずにすべての利益を再投資する場合もあります。企業ごとに配当方針が異なるため、投資家は過去の配当実績や配当利回りなどを見て投資判断を行うことが重要です。
配当を受け取る権利を得るには?
配当を確実に受け取るには、「いつ株を買うか」がカギになります。特に重要なのが次の3つのタイミングを抑えておくことです。
・権利落ち日:権利確定日の1営業日前。この日に株を買っても、その回の配当は受け取れない
・権利確定日:企業が「この日に株を保有している人に配当を出す」と決める基準日
※株主優待も同様。ただし、株主優待を実施していない企業もあります。また、優待を受け取るのに必要な株数を満たしていない場合は株主優待を受け取ることはできません。
<権利確定までのスケジュール例>

※画像は当社が作成
株の受け渡しには原則2営業日かかるので、権利付き最終日は「権利確定日の2営業日前」となる点に注意が必要です。また、配当金支払い日は企業によって異なるため、支払われるタイミングも確認しておくとよいでしょう。
なお、配当金は課税対象になりますが、NISA口座であれば非課税で受け取ることができます。
配当利回りとは?
一般的に、日本企業では年に1~2回、米国などでは四半期ごとに配当を実施する企業が多いですが、その頻度は企業によって異なります。配当を判断する際には、「配当利回り」という指標もよく用いられます。
配当利回りの算出方法は次のとおりです。
<配当利回りの算出方法>
高い利回りを持つ企業は魅力的な投資先と見られることが多いでしょう。配当金は単に利益の分配にとどまらず、投資判断においても非常に重要な役割を果たすと言えます。
しかし同時に、配当利回りはあくまで判断基準の一つであり、「配当利回りが高ければ高いほど良い」というわけではない点には注意が必要です。
例えば、ある銘柄の株価が1,000円で、年間の配当金額が15円だったとします。この時配当利回りは1.5%です。しかし翌年、この銘柄の株価が500円に下がったにもかかわらず、年間配当金が1株当たり15円のままだったとすると、配当利回りは計算上3%と高く算出されることになります。
また、本当に業績が悪化した場合、配当金が減少し、結果として配当利回りも低くなってくる可能性があります。「高い配当金が得られるはず」と考えていた方にとっては、誤算だったということになりかねません。
そのため、配当利回りだけを見てすぐに飛びつくのではなく、過去の実績や財務状況を見て総合的に判断する姿勢が求められるのです。また、配当利回りの予想はあくまでも参考値であり、確実にその金額が支払われるとは限らない点も押さえておきましょう。
【用語解説】高配当・累進配当・連続増配の違いは?
高配当、累進配当、連続増配と呼ばれる銘柄は、いずれも配当を重視して投資先を選ぶ際の参考になりますが、それぞれ異なる特徴を持っています。以下に簡単に整理します。

※上の表は当社が作成
特に「累進配当」と「連続増配」は似た印象を持つかもしれませんが、それぞれの違いを正しく理解しておくことが大切です。具体的に解説していきましょう。
高配当株(銘柄)とは?
高配当株とは、その名の通り高い配当利回りを提供する銘柄のことです。これにより、投資家は安定した配当金収入を得られる可能性が高まります。高配当銘柄はしばしば、成熟した業界や安定したビジネスモデルを持つ企業で見られます。
厳密に何%以上が高配当だと決まっているわけではありませんが、一般的には3%以上が高配当とされていることが多いようです。業種や市場環境によって異なるという点には留意が必要ですが、一つの参考にしてみるのもよいでしょう。
累進配当株(銘柄)とは?
累進配当株とは、減配を避け、配当を維持または増加させることを基本とする配当方針を掲げている企業の銘柄のことです。累進配当銘柄と呼ぶかどうかは、必ずしも「実績ベースで配当を増加させているかどうか」では決まりません。もちろん、実績を伴っていることもありますが、「(配当を維持または増加させる)方針を打ち出している」企業かどうかであるという点を抑えておきましょう。
企業が累進配当を方針として掲げる背景には、投資家への安定的な還元を重視する姿勢があります。また、「減配リスクが低い」と投資家に評価されやすくなることで、株式の長期保有を促したり、企業への信頼感が高まったりする効果も期待できます。
連続増配株(銘柄)とは?
連続増配株とは、特定の期間にわたり毎年配当を増やし続けている企業の株式を指します。累進配当があくまで企業の配当方針を指すのに対し、連続増配とは「実際の配当履歴ベース」であることに留意が必要です。
連続増配の定義も、厳密に何年以上と決まっているわけではありませんが、例えば10年以上連続して増配していれば連続増配株と呼んで差し支えないでしょう。
連続増配を続ける企業には、将来的にも配当の成長が期待できるため、投資家にとって魅力的な存在となります。連続して配当が増えていることが企業の安定性を示すとも見ることができ、投資判断の一助となるでしょう。
高配当・累進配当・連続増配のメリット・デメリット
高配当・累進配当・連続配当を狙った投資には、それぞれにメリット・デメリットがあります。また、これらに共通した「配当株投資に共通するメリット・デメリット」と言えるものもあります。
次の表は、メリット・デメリットを簡易にまとめたものになります。
<メリット>
特徴 | 高配当株 | 累進配当株 | 連続増配株 | |
メリット | 個別 メリット |
・配当利回りが高く、1回あたりのインカムゲインが大きくなりやすい | ・減配リスクが低い ・安定した配当政策で将来の予測がしやすい |
・長期的な配当成長が期待できる ・企業の安定性、信頼性が高い |
共通 メリット |
・配当収入により、定期的な現金収入が得られる ・企業の財務健全性や経営の安定性が重視されるため、長期保有に適している |
※上の表は当社が作成
<デメリット>
特徴 | 高配当株 | 累進配当株 | 連続増配株 | |
デメリット | 個別 デメリット |
・高配当が一時的な可能性がある ・減配リスクが高い場合がある |
・業績悪化時に無理な配当維持をする可能性もある ・成長性が限定的な場合がある |
・利回りが相対的に低いことも多い ・配当増加のプレッシャーから無理な経営判断をする可能性もある |
共通 デメリット |
・配当を重視する企業は、再投資による成長よりも株主還元を優先する傾向がある ・業績悪化や経済危機時には、配当が減る可能性がある(特に高配当株) ・配当には課税されるため、税引後のリターンが目減りする(NISA口座での取引は非課税) |
※上の表は当社が作成
配当に関するこれらの用語は似ていると感じるかもしれませんが、それぞれに特徴があります。よくご理解の上、ご自身のスタンスに応じて投資先を検討することが大切です。
実践!配当重視の投資で注目するべきポイント
もちろん、選んだ銘柄から必ず思い通りに配当金が得られ続けるとは限りません。ですが配当金を重視する場合は特に、「安定して配当が実施される可能性が高そうか?」や「一時的な高配当ではないか?」など、よく考えておく必要があるでしょう。
証券会社で提供しているスクリーニング機能や、企業の提供しているIR情報などを活用し、次のようなポイントに注目して銘柄を探してみるのがおすすめです。
1. 配当利回り:配当利回りが高いほど、投資額に対するリターンが期待できます。業種などにもよりますが、3%程度配当があれば「高配当」と呼んで差し支えないと思われます。ただし、利回りが極端に高い場合はリスクも伴うため注意が必要ですので、3~5%など範囲を絞りつつ探してみるとよいでしょう。
2. 配当の安定性:過去の配当履歴を調べて、安定した配当を出している企業を選びましょう。連続増配株は特に注目です。例えば、過去10年間連続して配当を増やしている企業は信頼性が高いとされています。
3. 企業の財務状況:企業の自己資本比率やキャッシュフローなどから、健全な財務状況が保たれているか確認することが望ましいでしょう。一般的には、自己資本比率は50%を超えていれば優良な部類に入ります(20%~50%程度が普通)。
4. 業種の選定:配当株は業種によって異なる動向があります。例えば、公益事業や消費財のような安定した業種は、配当を出しやすい傾向にあると言われています。
5. 配当性向:利益のうちどれだけを配当に回しているかを確認しましょう。一般的には30〜60%程度が健全とされており、高すぎるとその後減配していくリスクもあり得ます。
なお、三菱UFJ eスマート証券では、気になる条件で銘柄を絞り込みできる「カブナビ」というスクリーニングツールをご提供しています。配当株投資を検討している場合、ぜひご活用ください。
≫三菱UFJ eスマート証券のスクリーニング「カブナビ」はこちら
※カブナビのご利用にはログインが必要です。
配当金が魅力の投資先は、暴落にも強い?
累進配当や連続増配銘柄は企業の財務基盤が強固であることが多く、株式相場が下落傾向であっても配当金収入が支えとなる可能性があります。また高成長の継続が期待できる企業であれば、市場が不安定な局面でも、暴落後の株価の戻りや高値更新も期待できます。 インカムゲインは銘柄を保有していることで得られる利益であることを踏まえると、株価が下がったタイミングで、配当が魅力の投資先を買い増しするというのも一案でしょう。
いずれにしても配当金をしっかり受け取りたい場合は、興味のある銘柄の権利付最終日や、過去の配当実績、財務状況などをよくご確認のうえ購入することをおすすめします。
最短10分で申込み完了!
無料口座開設はこちら